1.街が沈んで、長い年月のあと──。
2.大地は浮上し、廃墟となった街は再び地上に現れた。
3.やがて人々が住み着き、街は再び活気を取り戻した。
4.新たな街の人々は、海底で腐食した人の彫刻を見つけ、
5.これはこの地の神の像だと考えた。
6.像を崇める人が増え、やがて、像を神とした信仰が生まれた。
7.像から導きの声が聞こえるとほらを吹いたものが教祖となり、
8.彼の組織が街を支配した──。9.
10.街に暮らすひとりの少女――彼女は両親と仲睦まじく暮らしていた。
11.ある日、少女は街はずれで見つけた、ひとつの像に魅入られた。
12.憧れと憂いを宿し、微笑む少年の像。
13.像の目を覗き込むと、少女の頭に曖昧なイメージが去来し始めた。
14.それは、像が宿した過去の記憶と感情――。15.
16.その奔流の中で少女は、自分はこの少年の生まれ変わりなのだと悟った。
17.絵を描きたいという衝動が突如湧き上がり、少女は足早に帰路に着いた。18.
19.街の掟では、像の絵を描いてはならなかった。
20.少女は両親の目を盗んで像の絵を描いた。
21.ある日、少女が隠していた絵を、両親が見つけた。
22.両親は少女を密告し、少女は罪に問われた。
23.少女は神官に問うた。「なぜ像の絵を描いてはいけないのですか」。
24.神官は答えた。「それが掟だからだ」。
25.怒り、疑念、情熱――少女の思いを受け止める者はいなかった。
26.両親でさえも。
27.少女は街を追放され、街の外に広がる森へ追いやられた。