咲かない桜の木の下で 春を待っていた
どうしようもないくらいの青色の季節を
ひとりで待っていた
名前のないその桜の木の下で
名前のない感情を
どうしようもない この胸の空虚を
ひとり眺めていた
咲かない桜の木の下で
宛名のない手紙をただ待っていた
名前のないあたしからの
手紙を書いていた
いつからか夢中になって
他愛のない関係をただ繰り返して
どうしようもなく 色づく季節を
ただ追いかけていた
宛名のない手紙の君へ
あなたと交わした言葉のひとつひとつを
そのすべてをきっと
思い出すこともできないけれど
つたない ふたりの 語らいが
他愛のないあたしたちの関係が
どうしようもないくらい
過ぎゆく日々のすべてだったから
宛名のない手紙の君の
あなたの教えてくれたその季節が
言葉にならないくらい
あたしの知らない色だったから
あなたに書いた最後の手紙が
あなたとのその別れが
それはもう どうしようもないくらい
青色の季節だったから
咲かない桜の木の下で
どうかそのあこがれが花開くように
滴り落ちていく言葉と
とどまることのない想いを
あなたの教えてくれた季節が
あなたとのその別れが
あなたへの最後の手紙が
どうしようもないくらい
春だったから
あなたと過ごした他愛のない季節
色づいた日々の中で
零れ落ちたあたしのあこがれが
名もない誰かへと届くように
その日々の名前は
どうしようもない
この高鳴りの名前は
いつかずっと待ちわびていた
青色の季節だったから
咲かない桜の木の下で
あなたに宛てた最後のその手紙(おもい)は
降りしきる春になって
やわらかい風に吹かれるように
その日々は
小さな桜色のつぼみをつけて
あたしの頬を染めたような気がした
そんな春だった