『飽きもせずまた
意味の無い歌を繰り返す
くだらない
戯言だ

【戯言】

死者の國にて

散乱している狂気
回覧している興味
本能を満たす情事
奔放を抱く老人
反骨溢れる正義
反発溢れる政治』

垂らされた糸を登る
肥えた男がいた
見放されたのか滑り
逆様に火に堕ちた

『悠久の呵責に苛まれし囚人らにとって
流星は数少ない嗜好品であった
これはお釈迦様の施しに違いない
ありがとう

蓮の葉と蜘蛛の糸
堕ちる男』

暗き彼岸を照らす光明
救われぬ者として
覚束ず　未来など無く
餌に縋る

天より汚れ堕ちる流星
「おいどうなったんだ」
「分かんないがどうせ同じだろう」

本当も嘘も無く　ここでは
全部　ただの娯楽に成ってく
見極められても遅いのさ

『そうしてずっと
分かり合えずいる
分かり合う気など無い
分かり合えるものなど何も無い

ただ見下しあって
安心したいだけの
今にも消えてしまう蝋燭のように
儚くて尊い絆を守り続けている

その後も囚人たちは仲良く
死ぬことも出来ず
苦しみましたとさ
めでたし　めでたし

【戯言零】

気付けば私は酷熱氷寒の谷に倒れていた
それを見た囚人の一人が云ふ

誰もあの屍で出来た煉獄山を登って
天上を目指すなんてことはしないのだ
堕ちてくる連中を文字通り山ほど見ているからね
そうして我々はただ人の不幸を餌にするしかなくなった

誰も光へ手を伸ばさない
委縮して　俯いて　聲も出さず
本当に救いの手が差し伸べられた時も
それに気付かない

そんなことより
他人の足を引っ張っている方が
はるかに有意義なんだ
安全な処に隠れて一方的に火を投げ入れる方が
はるかに生産的なんだ

そんな中でも特に
守るものも　戻るところも失って
獄卒の責め苦すらも恐れなくなった者は
無敵の英雄となる

私はこの倫理が欠如した話を
自然と受け入れていた

【戯言外伝】

生者の國にて』

呼吸をしてる証明が欲しくて
愛情撒いて数字信仰
友達ごっこ　契約書を書いて
笑いそうでしょほら

森羅万象　全部が欲しいけど
私だけを好きって言って
優劣　依存　嫉妬　金勘定
縋りつくように

ねえ優しくしてよ

心を売って　身体を売って　名前を売った
仲間を売って　家族を売って　名誉を買った
歪んだ　誇り高く育った尊厳は
見世物に成る

口から滑り堕ちてく火種
可哀そうに
燃えてく生者の灰
面白いんでしょう

『一生懸命握っていた蜘蛛の糸は
音も無く途切れ
腐臭を放つ屍の山を転げ落ちる

太陽も空も
名誉も愛情も
自分も誰かも
全てを遠ざかり

目を覚ます頃には
死者の國の
赤黒い固形の海に沈んでいた』

分かんないよ　分かんないよ
何もかも与えてくれたのに
人間程度の理性をも欠いて

何十回も何百回も
頭垂れ　騙され　辿り着く
死顔すら晒されるんだと
そして何もかも消えた

『死者だとか生者だとか
そんな境界線があるのだと
勘違いしていた
ここには地獄しかないのに』